企業会計と法人税法の違い
法人は毎期確定した決算に基づく利益に対して法人税が課税されるイメージがあるかと思いますが、実は少し違います。企業会計と法人税法ではそれぞれの目的が異なります。法人税法の目的は、公平な課税を行うことにに対し、企業会計の目的は適正な期間損益計算を行い、利益を把握して企業の財政状態や経営成績を知ることです。
企業会計上の利益=収益−費用
法人税法上の所得=益金−損金
法人税
・益金の額 法人税法は、各事業年度の所得の金額をその事業年度の益金の額から損金の額を控除して算定すると定めています。益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引でその事業年度の収益の額と定められています。ここでの収益の額とは販売もしくは譲渡をした資産の引渡し時の価額又は役務の提供につき通常得べき対価の額、いわゆる時価となります。
・損金の額 損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、以下の金額と定められています。
1.その事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他の原価の額
2.その事業年度の販売費・一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
3.その事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
上記別段の定めとは、会計上の収益や費用に計上されていても、税法上それを否認したり、反対に会計上の収益や費用に計上されていなくても税務上、その計上を認めたりするものです。
無償による資産の譲渡・譲受け
法人税法22条により法人が所有する資産(機械、車両等)を無償譲渡した場合には、法人税法上、時価で取引したとされます。
・譲渡側
資産を無償譲渡した場合、時価を益金の額に算入するとともにその額を寄付したという処理になります。寄附金の額 が全額損金として認められると所得は0円になりますが、法人税法上寄附金の額のうち一定額を超える部分の金額は損金の額に算入されないこととなっています。
・譲受け側
時価を益金の額に算入します。
・例題
● A社 ⇒ B社に土地を無償贈与した(土地帳簿価格400 / 時価600)
● 寄付金損金算入限度額は200とする。
● A社、B社はグループ会社ではなく、グループ法人税制の適用はないものとする。
1.A社(譲渡側)
法人税法上 寄附金600/土地400
土地売却益200
企業会計上 寄附金400/土地400
※借方寄付金については、損金算入限度額を超える部分は「損金不算入」となります。なお、贈与の相手先が従業員・役員の場合は、借方の勘定科目が「給与」or「役員報酬」となり、「役員報酬」については、原則全額損金不算入となります。
2.B社(譲受け側)
土地600/受贈益600
※税務上は、時価で取得したものとされるため、土地を時価で受け入れ、「受贈益」は、法人税課税対象となります。なお、受贈側が従業員・役員の場合は「給与課税」、第三者の場合は、「一時所得」として所得税が課税されます。
企業会計では寄附金の額は費用として処理することは可能ですが、法人税法上一部損金に認められませんので、企業会計上の利益と法人税法上の所得の金額に差異が発生します。