減資による法人税逃れについて

たま~にニュースで聞く〝有名企業による減資〟
あまり深く考えず、業績が悪いのかなぁなんておもうくらいでしたが、税金面から見てみるととても興味深いものでした。

ニュースの見出しになるのは「○○社が資本金を△△億円から1億円に減資」や「××社が臨時株主総会で1千万円への減資を承認された」など、どの会社も1億円超から1億円以下への減資がほとんどです。これは資本金が1億円を境に税法上の扱いが大きく変わるためです。

税法では「大企業」と「中小企業」の企業区分に資本金の額が使用され、資本金が1億円超なら大企業、1億円以下なら中小企業となります。現状、法人税等を計算する上では中小企業に対して複数の税制優遇があります。税制優遇は、赤字決算の際にその赤字額を翌期以降に全額持ち越せたり、固定資産を取得した際に特別な償却が認められていたり、法人税率に軽減措置があったりなどですが、そのなかでも一番の優遇は法人事業税の「外形標準課税」の対象外というところです。

外形標準課税とは他の法人税等と計算方法が大きく異なるものです。他の法人税等は利益に対してかかる税金ですが、外形標準課税は利益だけでなく資本金や付加価値というものに対してもかかる税金です。つまり大企業は利益のでていない赤字決算であっても資本金がある限りそこそこの税金が発生してしまうということです。減資にはマイナスなイメージがあり、実際に社会的な信用力が低下する可能性もあります。その上で取引先などとの関係性に問題が無いのであれば、もしくは多少の問題があってもそれ以上に税金面のメリットが予想されるのであれば、減資という選択は有効的ということですね。                                

税制優遇を目的に減資することは制度上問題のない「節税手段」ですが、ニュースなどでは「税逃れ」と問題視されます。令和5年11月には総務省が開催する検討会にて外形標準課税の対象について見直し案がまとめられ、結果令和5年12月公表の「令和6年度税制改正大綱」にて外形標準課税制度の見直しが行われました。令和7年4月以降に開始する事業年度からは、外形標準課税の対象か判定する際に「資本金の額」だけでなく「資本金と資本剰余金の合計額」も使用されることになりました。これにより今までのような減資をするだけでは外形標準課税の対象外になれない可能性がでてきたことになります。

これ以外にも制度上「ダメ」ではないが「ズルい」ものに対しては、適宜見直しが行われるかもしれませんね。

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